【第1幕】
19世紀末のブリュージュ(ブルッヘ)。主役のパウルは若い中産階級の男で、妻マリーの死という現実を甘受することができずにいる。妻を偲んで自宅に「なごりの部屋」と呼ばれる一室を構えたパウルは、そこにマリーの形見である肖像画や写真、一束の遺髪といったものを陳列している。パウルの友人フランクがパウルの住まいに立ち寄り、生きることへの執着を説くが、パウルはマリーが「まだ生きている」と言い張り、ブリュージュの街路でマリーに出逢い、彼女を自宅に招いたのだと熱っぽく語る。間もなく、若くて美しく、そして亡きマリーに生き写しの踊り子マリエッタがパウルの家を訪れる。パウルは彼女のことをマリーと呼びかけて、彼女に訂正される。そういったパウルの奇妙な言動にマリエッタはうんざりしながらも、自分に興味を持ってもらおうとして、魅惑的に歌ったり踊ったりするが(マリエッタの唄)、そのうちにマリーの肖像画を見つけ、自分がマリーの代わりにされているのだと悟って家を出て行く。亡き妻への忠誠心とマリエッタへの興味に引き裂かれるパウル、椅子に倒れ込むなり彼の目の前に幻覚が展開する。マリーの肖像画から彼女の亡霊が歩み出て、自分のことを忘れないでくれと催促するが、その後マリーの幻影はマリエッタに姿を変えて、パウルに自分自身を見失わずに、自分の生き方を続けるようにと説く。
【第2幕】
パウルが抱く幻想の余韻で幕を開ける。舞台は変わって水路の巡らされたブリュージュの街となる。マリエッタの家の前を徘徊するパウル。そんな様子に家政婦のブリギッタは辟易し、修道女となってパウルを咎める。やがてフランクが現れるが、彼もまたマリエッタの虜となっていた。彼女に受け入れられた証としてフランクが示したマリエッタの家の鍵を、パウルは力ずくで奪い取った。やがてマリエッタが舞台仲間たちと一緒に船に乗って現れる。彼らはパウルのことを皮肉ったりしてはしゃいでいる(ピエロの唄)。やがて彼らがマイアベーアの『悪魔のロベール』の稽古をしようとすると、マリーの清楚なイメージをマリエッタに重ねているパウルは、不埒な娘を演じようとするマリエッタを諌める。パウルを囃し立てる舞台俳優たち、しかしマリエッタは彼と彼女との問題であると言い張って二人きりにさせる。マリーの幻影を打ち砕く事に執念を燃やすマリエッタ、ついにパウルは彼女の誘惑に負け、彼女と一夜を共にすることになる。
【第3幕】
舞台は再び自宅へと戻る。勝ち誇った様子のマリエッタ、だがパウルは先妻への思いから自分を恥じ入るようになり、外を行く聖職者の行列さえ自分を非難しているように感じている。その様子に業を煮やしたマリエッタは、パウルの目をさまそうとマリーの遺髪を引っ張り出してもてあそぶ。激嵩したパウルは遺髪の束を奪い返すと、その遺髪でマリエッタを絞め殺してしまう。我に返ったパウルは、マリエッタの亡骸にすがりながら「これで彼女もマリーそっくりになった」と漏らす。パウルがふと目を覚ますと、マリエッタの姿がどこにも見当たらないことに驚く。程なくして家政婦ブリギッタが「お客様がお忘れ物の傘を取りに戻られました」と告げる。彼は今までずっと幻を見ていたのだ。パウルはブリュージュを去ることを決意し、友人フランクの傍ら、マリーの形見のある我が家を離れて、新しい暮らしに思いを馳せるのであった
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