知っとこピアノ豆知識集(004)

ピアノの歴史(誕生以来どの様に進化して来たのでしょうか?)

チェンバロ

スクエアー・ピアノ

アップライト・ピアノ

グランドピアノ
ヴァイオリン等の楽器は生まれた時からあまり大きな進化はしていませんが、ピアノはこの歴史の中で形状、性能共に大きく進化して来ました。形状的には親に当たるチェンバロの形状を引き継いで行ったのが、現在のグランドピアノであり、一般家庭への普及を目指して、コンパクト化を進めて行ったものが、現在のアップライトピアノにあたりま す。性能的には一つは大きなコンサートホールにおいても使用できる程の、大音量化であり、もう一つが音域の拡大と演奏法の進歩(高度化)に追随したメカニズムの改善です。詳細には下記の通りです。
ピアノの誕生は前記001の通りです。その後ピアノの開発は、ドイツ人のオルガン製作家、ゴットフリート・ジルバーマン(1683-1753)に受け継がれ、発展していきました。ちなみに、J.S.バッハが当時ジルバーマン製のピアノを弾いたことがあると推測されています。ただ当時のピアノはあまり出来が良くなく、お気に召さなかったようで、彼はピアノのための作品は残していません。鍵盤曲は全て、チェンバロとオルガンの曲です。18世紀後半には、ドイツのヨハン・アンドレアス・シュタイン(1728-92)が、ジルバーマンのメカニズムに改良を加え、ドイツ式(ウィーン式)アクションを完成させました。シュタインのピアノは、連打が可能なエスケープメント機構を備えていて、軽快なタッチと音が特徴でした。モーツァルトは21歳の時にこのピアノに出会って感動し、以後これを愛用し、ピアノ曲をたくさん書きました。ちなみに、このピアノの鍵盤は浅く、現在の半分くらいの軽さで弾けたようです。音域は5オクターブで、61鍵でした。同じ頃、イギリスではヨハネス・ツンペがクラヴィコードにハンマーアクション(イギリス式アクション)を付けたスクエアピアノを開発しました。1768年に、J.S.バッハの息子であるJ.C.バッハが、このピアノで公開演奏しました。ピアノがソロで公開演奏されるのは、これが初めてだったそうです。1780年頃、ジョン・ブロードウッドが、ツンペが開発したイギリス式アクションを改良し、弦の弾力を増し、フレームも強化しました。抵抗感のあるタッチと、力強い音が特徴です。このブロードウッド製のピアノは、晩年のベートーヴェンが愛用していました。18世紀の終わりごろまで、ピアノは、一台一台手作りで、音域は5オクターブが標準でした。しかし19世紀からは、ピアノは工業生産されるようになり、音域も段々広くなっていきます。1789年のフランス革命以降、それまで貴族のものだったピアノ音楽が一般大衆化します。18世紀末には、多くの人を収容できるホールができ、ピアノもそれに対応できるように、大きな音量と音の伸びが必要になりました。そこで、弦はより高い張力で張られ、それを支えるフレームにも、頑丈な鉄骨が使われ始めます。そうなると、もうピアノを手作りするのは不可能になり、工業生産されるようになったのです。19世紀には、ピアノ奏法が発達し、それに対応できるピアノが必要になりました。この頃ピアノ音楽はロマン派の時代で、素早い連打やトリルなどの装飾音、速い連続したパッセージが多用されていたのです。そこで、1821年に、フランスのピエール・エラールが、素早い連打も可能にした画期的な現代グランドアクション(ダブルエスケープメントアクション)を発明しました。1820年以降、各国で、ピアノの製造方法が改良されたり発明されたりしました。弦は、それまでの細い真鍮からミュージックワイヤーに代わり、音量がかなり増大しました。また、低音の音量を上げるために、太い銅の巻線を使用するようになりました。張弦を交叉(こうさ)式にした交叉弦も考案され、コンパクトになりました。そして、音域は、82鍵まで広がりました。ところで、ここまでの話は、全部グランドピアノについてです。現在の家庭で一般的なのはアップライトピアノだと思いますが、これが誕生したのはこの頃、つまり19世紀初めでした。18世紀に、ハープシーコードの弦を垂直方向に張ったクラヴィシテリウムが多く作られました。これを元に、フィラデルフィアのジョン・アイザック・ホーキンスがアップライトピアノを製作し、このコンパクトなピアノは、広く普及するようになりました。1800年のことです。
また、アップライトピアノを装飾した「ジラフピアノ(キリンみたいな形のピアノ)」などの変わったピアノも誕生しました。19世紀半ばには、ピアノのメカニズムは一応完成し、現在のものとほぼ同じになりました。ショパンやリストの時代です。リストは過激な(?)演奏で、よくピアノを壊していたようですが、それに対抗するように、ピアノは丈夫になっていきました。1840年に、ピアノの弦は、更に太い巻線になり、全体の張力も増大しました。そして、それを支えるフレームは鋳物(いもの)の鉄骨を組むようになりました。これ以降、ピアノは大ホールに対応できる音量や、協奏曲などでオーケストラに負けないようにするために、改良されていきます。鍵盤は長くなり、沈みも深くなりました。弦も限界まで張力を高め、現代では20トンに及びます。第一次大戦後、音域は現在と同じ88鍵になりました。このように長い歴史を経て、現在のピアノが完成しました。