知っとこピアノ豆知識集(005)

バイエルは日本の常識、世界の不(?)常識?
”不常識”と言う言葉は日本語には無いと思いますが、”常識にあらず”と言う意味で、敢えてここではこの言葉を使用させて頂きます。”常識”の反対語は”非常識”になるのでしょうが、”非常識”ではバイエル教本の有用性を否定しかねず、”不常識”としました。(この項目は”バイエル教本の有用性を否定するものではありません、念の為)日本ではピアノ演奏を志す者は誰でも一度は手にする有名な教本ですが、どう言う訳か海外では現在では全くと言う程、知られておりません。(バイエルと言えばアスピリンの開発で有名な製薬会社が有名ですが・・・)本場のドイツでさえ今では忘れ去られている教本の様です。では何故日本では、この様な事になっているのでしょうか?それは明治維新に始まった日本のピアノ教育の歴史に深く根ざしているのです。1881年に明治政府はアメリカからルーサー・ホワイティング・メイソンと言う人物を日本初の外国人音楽教師として招聘しました。その時にメーソンがピアノ教育用に持って来たのが20冊のバイエル教本でした。以来バイエルは日本で絶大な人気を誇るピアノ教本になりました。さて日本で最初のピアノ教育を受けた伝習生たちは、卒業後は指導者として日本各地にバイエルを広めて行きました。”バイエル”を”バイブル”の様な扱いで広めて行ったのです。バイエルで育った人たちが教師になると、またバイエルを使う事になり、以降100年以上にわたってこの繰り返しが行われて来ました。こうしてバイエルは日本全国に根付くことになった様です。(まさかメーソンだって日本に自分が持ってきたバイエルがこれ程までに浸透するとは予想もしていなかったでしょうね)ただこれだけ長続き出来たのは、どこか日本人に合った教本だったからかも知れませんね。勿論これだけ古い教本ですから、著作権の問題も無く、自由に使えるのも今では大きなメリットかも知れません。(それにしても海外ではどの様な教本が今使われているのでしょうね?)