知っとこピアノ豆知識集(013)

あの世のベートーヴェン曰く”エリーゼて誰のこと?”
ピアノを弾く人からも、又弾かない人からも広く愛されて来たベートーヴェンのピアノの名曲”エリーゼのために”の名前が実は間違っていた様です。この曲は、最近の研究でベートーヴェンをめぐる女性のひとりテレーゼ・フォン・マルファッティのために作曲されたと言うのが本当だろうと言われる様になって来ております。従って本来なら”テレーゼのために”と呼ばれるべき曲だと言えます。(私は個人的には”テレーゼ”よりも”エリーゼ”の方が曲の名前には合っている気がします)ベートーヴェンの交友関係を調べても、エリーゼと言う名前は見当たりません。このテレーゼはベートーヴェンから贈られた彼のこの曲の自筆譜を後にミュンヘン在住の女性ブレートルに贈っていますが、これを研究者のノールが知り、1867年に公開しています。その際ノールは「エリーゼのために Fur Elise」の上書きがあったことを指摘していますが、おそらくこれは「テレーゼのために Fur Therese」と記されていたのではないかと推察されます。これは現存するベートーヴェンの自筆楽譜の悪筆さを見ても、十分考えられることです。ベートーヴェンもおそらくあの世で”テレーゼて誰のこと?”と言っているのではないかと思います。
いずれにしても、ノールの公開以来自筆譜が失われているので、真相は不明です。完全な形での初版は1870年に刊行されました。作曲年は1810年4月で、ベートーヴェン40歳の作品です。曲は、8分の3拍子(Poco moto)・amoll(イ短調)3部構成(A-B-A)をとるバガテルです。中間部の和声的構造に対照をなして冒頭Aは抒情的で美しく流れます。ピアノ学習者はもとより、ピアノをよく知らない人にも人気のある大変有名なメロディですが、きれいに演奏するには意外と難しく、内容的にもピアノ奏法の基礎テクニックが集約された佳作です。バガテル(Bagatelle)とは、ピアノのための性格的小品(キャラクターピース)のひとつで、バガテルとは「ちょっとした」「つまらないもの」の意味です。大曲の作曲過程でこぼれ落ちた楽想や、ふとした思いつきで手遊びとして書かれたものという意味合いが強いものです。定まった形式は認められず、曲の長さも3分程度のまとまったものから断片的な短いものまで多様です。
◇ベートーヴェンのバガテル作品
・7つのバガテル op.33
・バガテル「エリーゼのために」 Wo0.59
・11の新しいバガテル op.119
・6つのバガテル op.126
ベートーヴェン
ベートーヴェン手書き楽譜
テレーゼ・フォン・マルファティ