知っとこピアノ豆知識集(017)

ピアノの連弾はバッハやモーツアルトの時代から
本格的に行われる様になりました。

連弾するヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトと姉マリア・アンナ。ヴァイオリンを持つのは父レオポルト・モーツァルト
歴史的にはニコラス・カールトンの「A Verse for two to play」とトーマス・トムキンズの「A Fancy for two to play」が最も古い連弾作品の例だと言われています。(カールトンとトムキンズは、17世紀初期から中期のイギリスの作曲家。)しかし、これらは5オクターヴ半という小さなハープシコードのために書かれており、また鍵盤の幅も狭かったので、"ふたり並んで弾く"ということがとても窮屈であったようです。また、当時は技巧をこらした名人芸的なテクニックがもてはやされた時代だったので、苦労しながら地道に音楽を追求する連弾は片隅に追いやられた。・・・など諸々の説により、その後約一世紀の間、連弾は影をひそめていました。連弾が、成熟したピアノ曲のジャンルとなったのは、18世紀末期で、火付け役はヨハン・クリスチャン・バッハとモーツァルトでした。モーツァルトは、自作を姉のナンネルと仲良く公開演奏しました。当時「二人の子供が一台のピアノをふたり一緒に演奏します・・・」と派手に宣伝されたことと、この曲の中にはふたりの手が交差しながら弾く曲芸テクニックが使われていたことなどから、多くの聴衆を集めたと言います。連弾処女作のヒットに気をよくしたモーツァルトは、続いてザルツブルクで連弾曲第2作、3作目も作曲しウィーンに連弾演奏を花開かせました。このあたりから、作曲家は有名無名を問わず連弾曲を競い合うようになりました。19世紀に入ると、ピアノ楽器そのものの発展→鍵盤の拡大(7オクターヴ半へ)や弦の張力の進歩といった改良に伴い、連弾曲も大きく変化することとなりました。音楽表現の高度な可能性、オーケストラ的要素などの多様な表現性の認識から、シューベルトをはじめ優れた連弾作品が生まれました。また、この頃の大衆の要求が、有名なオペラや耳慣れたオーケストラの曲を手軽に家庭で友達と〜先生と連弾で演奏することで、このため多くの名曲がピアノ連弾用に編曲されました。その後も時代の流れと共に、多くの作曲家が連弾曲を生み出し、そして弾き継がれ、現在では連弾関連のコンクールやフェスティバルも世界各地で催されるようになり、連弾はピアノ音楽の中に確固たる地位を確立しました。