マクロの世界

(01)日本のお祭りの起源は?

日本人にとって祭りとは何か。それを理解するためのキーワードは春夏秋冬です。春の訪れとともに種をまき、夏には台風や害虫、疫病などの被害にあわないことを願い、秋の実りに感謝を捧げ、寒さの厳しい冬にはこもりながら魂を充実させていく……日本には、季節の移り変わりに寄り添うように人々の営みがあり、日本人の季節感が祭りに凝縮されていると言えます。

春と秋は豊作祈願と感謝祭

春は稲を植える季節で、日本人にとっては「始まり」を意味します。祭りの代表としては豊作を祈願する「お田植え祭」があり、伝統的な祭りとして全国各地に広がっています。実際に田植えをするものと、田植えの所作を模擬的に演じるものとがあります。前者の代表は、大阪住吉区の「御田植神事」(6月15日)で、後者には奈良県明日香村の「おんだ祭り」(2月第一日曜日)などがあります。



お田植え祭と対になっている秋祭りは、稲刈りの時期に行う「新嘗(にいなめ)祭」です。米が無事に収穫できたことを神に感謝する行事で、新穀を供える祭りとして11月23日の「勤労感謝の日」(国民の祝日)に行われることが多いです。中でも神道の頂点に位置する三重県伊勢市の伊勢神宮で行われる新嘗祭と「神嘗(かんなめ)祭」は荘厳な祭りで有名です。

夏は疫病退散、虫送り・台風除け

夏の祭りは都市と地方で異なります。夏は疫病が流行し、神の祟りと恐れられていました。そのため、祭りも疫病退散を目的としたものが多いです。代表的なものが京都の「祇園祭(ぎおんまつり)」(7月1日〜31日)、大阪の「天神祭(てんじんまつり)」(7月24日〜25日)です。京都と交易が深かった都市も、同じように疫病に苦しめられたことから、祇園祭をまねて、独自の祭りを作り上げて行きました。

また、害虫の被害が最も多い夏は、台風や洪水に襲われる季節でもあり、農作物の生育が左右されやすいものです。そこで、農村では病害虫を追い払うための行事で“虫送り”や“台風除(よ)け”の祭りが行われてきました。虫送りの代表的なものが、青森の「ねぶた祭り」(8月2日〜7日)。台風除けの代表が、富山県の「越中おわら風の盆」(9月1日〜3日)です。

夏と言えば“お盆”。亡くなった人の霊や先祖の霊をあの世から呼び寄せ、霊を祀(まつ)る行事として全国的に広がっています。楽しい盆踊りや“送り火”という仏教系儀式が行われます。その代表例が京都の「五山送り火」(8月16日)です。



冬は新春祝い、町おこし

農閑期である冬は、厳しい寒さに耐えながら魂を充実させる季節です。穢(けがれ)を落とす禊(みそぎ)としての裸祭りや、炎が主役となる火祭りが行われます。裸祭りで有名なのは、岡山県の会陽(えよ)で行われる「裸祭り」(2月の第3土曜日)です。長野県の「道祖神(どうそじん)祭り」(1月13日〜15日)は火祭りの代表例です。



また、1年の始まりを祝う新春の祭りや節分などもあります。観光客を集めるために町おこしの一環として行われているものもあります。「さっぽろ雪まつり」(2月中旬)がその成功例です。

1年を通じて行われる祭りには、「祈り」「感謝」「願い」といった日本人の「生きるための想い」がすべて集約されています。だからこそ、代々受け継がれてきた祭りを大切に守り、次世代へと伝えていくことが大事です。